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ユリイカ 2009年3月号
「太歳通信」を
け、掲載頂きました
| enjoetoh | 00:00 | comments(0) | - | pookmark |
クリスマス短編
 ある時僕は、人生には愛が必要だと学ぶ。
 理屈ではない。

 来るべきものは、放っておいたってやって来る。それは真理だ。ただし、呼びつけもしないのにやって来るのは、ろくでもないものに決まっている。唐突ながら、うちの母親の話をしてみよう。あるとき不意にやってきて、以来、父親の背中に棲み着いている。故に、母親はろくでもない。彼女の方にも言い分があり、僕はある日突然、全く何の前兆もなく、彼女の股からひょっこり顔を覗かせた。故に僕もろくでもない。母親と目が合ったところで、一つ舌打ちをしたのだという。僕はどうにか胎の中へ引っ込み直そうとしたものらしいが、母親の悲鳴を聞いて駆けつけた父親に引っこ抜かれた。そこから先は修羅場となり、僕の記憶は定かではない。
 父親は、当然僕に指をつきつけ、こう問いつめた。
「俺の女の中で何をしていた」
 僕は煤にまみれたままで、火をつけられたように泣いていた。年齢分を鑑みて、もう少しおだやかな問いかけの方法があったと思う。人生の冒頭部を、父親から間男と決めつけられて始めなければならないなんて。勿論僕にも反論はあり、僕を孕ませたのは、あんたであって、僕ではない。そんなことを可能とするには、何かとんでもなくアクロバティックな仕業が必要そうだ。とても単純な推理と僕には思える。
「ちょっと待って」
 そう言い出した母親が注目したのが、自分自身の保有権に関する議論であったことを、僕は意外と思わない。あまりに当然の権利申し立てというものだ。私がいつ何時、あなたの女ということになったのか。お前はすっこんでろ。父親はそう宣言するべきだったと思う。この時点で父親の対峙するべき敵は、現場を押さえられた上、なす術もなく裸ん坊で泣き叫んでいる僕であり、敵に背中を見せるのは、全くのところ推奨されない。ポリティカリーなコレクトネスはお呼びではない。
「いや、まあ、まて、お前」
 お前、の一言が更に事態を紛糾させていくのを、僕は耳殻の遠くで聞いていた。

 父親が僕を、自分の子供だと納得するには、そこから長い長い時間がかかった。もしかして、未だにわかっていない可能性だってある。結局のところ、良く理解ができなかったものらしい。深夜に起き出し、父の書斎の前を通るたび、友人たちに電話をかける父親の声が耳に入った。
「それは当然、わかっている」
 父親は力強く断言する。
「ああ、無論。勿論。当然。間違いない。違う。断然、責任逃れなどではない」
 当時の父親の友人たちのことを考えると、同情の念を禁じ得ない。いい歳をした男から、間男に関する相談をされ、話をきくとどうやらそれは、自分の息子のことであるらしい。お前の子供だろうと、誰もが言う。無論、理屈の上ではそうなる、と父親は言う。感情の面でも認めると続ける。それじゃあ、一体何が問題なのか。ここらで友人たちは匙を投げる。
「だっておかしいじゃないか」
 と受話器を置きながら父親は言う。
 残念ながら、僕も全く同じ意見だ。

 僕を自分の息子だと認め、それでも残る違和感に一歩も譲らなかった父を次に襲った問題は、一体僕は誰なのか、ということだった。より正確に言うならば、僕は一体何なのかということだ。そこのところ、僕も大いに興味を持ったので、父親の腹の上であやされながら、涎をだあだあ浴びせかけた。
 父の考えるところによると、僕は、息子みたいなもの、ということになる。自然の条理に従って産まれた上で、自然の摂理に逆らっている。すなわち、自然はろくでもない。それが父の辿り着いた結論だった。ろくでもない自然がよこした以上、こいつは真っ当な息子ではない。真っ当ではないが息子である。父親はそうして自分を納得させようとしていたものらしい。だいたい、股の間から逆さまに出てくるなんていうことが、非常識極まりないではないかと、父は僕を前に置いて説教した。
「いいか」
 と父は、お襁褓姿で神妙にわだかまる僕に向かって言った。
「煙突を通り抜けるのに、頭から入り込むような間抜けを俺は息子に持った覚えはない。次はもっと上手くやるんだな」
 結局つまりはそういうことだ。
 僕はクリスマスイブの夜に産まれた。多分、この一件の真犯人は、サンタクロース。それは当然、僕のことだが。
 父親はただ、可哀い娘が欲しかったのに。
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発売中
「虚構機関 年刊日本SF傑作選」

http://www.tsogen.co.jp/np/detail.do?goods_id=3944
"2007年に発表された短編SFを精選した、ファン待望の企画! 筒井康隆『日本SFベスト集成』以来、32年ぶりの快挙。萩尾望都、堀晃、かんべむさしらベテランから、円城塔、伊藤計劃ら新鋭まで16編を収録。編者による詳細な解説を付す"

「パリンプセストあるいは重ね書きされた八つの物語」を収録頂きました
円注)エライ人ではありませんでした

「銀河英雄伝説外伝〈2〉 ユリアンのイゼルローン日記」
http://www.tsogen.co.jp/np/detail.do?goods_id=3943
解説をか、書かせて頂きました
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早稲田文学2号
「考速」を掲載頂きました
| enjoetoh | 16:23 | comments(0) | - | pookmark |
超短編:パックマン捕獲作戦(後編)
 
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超短編:パックマン捕獲作戦(前編)
| enjoetoh | 00:00 | comments(0) | - | pookmark |
モンキービジネス Vol3.5
ナイン・ストーリーズ号
「祖母の記録」を掲載頂きました
| enjoetoh | 00:00 | comments(0) | - | pookmark |
「サイエンス・イマジネーション 科学とSFの最前線、そして未来へ」


に顔を出させて頂いております

微妙に連動して
わたくしによるロボ本紹介企画棚(と一枚ペーパー)が
Book 1st
・渋谷文化村通り店(明日から)
・梅田店(9月半ばくらい)
・京都店(9月くらい)
・なんばウォーク店(9月くらい)
・アトレ大森店(9月くらい)
・秋葉原店(9月くらい)
で、あったりなかったりする予定です
みかけなくても泣かない
中止になっても泣かない
店員さんを問い詰めない

宜しくお願い致します
| enjoetoh | 23:35 | comments(1) | - | pookmark |
エクス・ポ VOL.4


《第4号の内容》
『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』がライトノベル界を超えて話題沸騰の新鋭作家、入間人間、初のロング・インタビュー!

6年ぶりの日本語フル・アルバム『歪曲』をドロップしたShing02の「言葉と音」に迫る渾身のインタビュー「B-BOY文学宣言」。

電子音楽の前衛を牽引する日英の雄、渋谷慶一郎&オウテカが、自らの/そしてお互いのサウンドとアプローチについてじっくりと語り合った、超ロング・ファースト対談。

そして好評につき今号も「3コママンガ」あります!

【スペシャルフィーチャー】
*オウテカ×渋谷慶一郎対談
*shing02インタビュー
*電撃文庫『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』シリーズの作家・入間人間(いるまひとま)メールインタビュー

【3コママンガ】
衿沢世衣子/青野春秋/西岡兄妹/オカヤイヅミ/小田島等/今日マチ子/友沢ミミヨ

【連載】
栗原裕一郎「天然無添加論壇時評ロハス」
西島大介「西島大介の裏マンガっち」
スズキロク「アンドハニー」
古川日出男「異種格闘技連続対談フルカワヒデオプラス」第4回クワハラスナオ
吉田アミ&雨宮まみ「アミ&まみのお悩み相談室」
松江哲明「あんにょん由美香」
鈴木謙介「うろ覚えの"J"ポップ時評」
福永信「福永信の、この常設がすごい!」「福永信の、この饒舌がすごい!」
冨田明宏「アニソン〈裏〉入門」
大谷能生「さよならの言い忘れ」
青山真治「3弦と4弦の間にバスタムを」
生西康典「中心の行方」
藤井仁子「また歌うために」
豊崎由美×仲俣暁生×佐々木敦「プロフェッショナル読者論」
円城塔「後藤さんのこと」
萩田洋文「¥OUR VOICE」
冨永昌敬「シャーリー・テンプル・ジャポン・パート7」
岡田利規「チェルフィッチュ岡田利規の超口語批評」
宇波拓&泉智也マンガ「呪いのバット」

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とのこと。
| enjoetoh | 00:00 | comments(0) | - | pookmark |
answer songs
TORNADO BASE
http://www.dot-anime.com/tb/a_songs/
「さかしま」円城 塔
配信が開始されました
| enjoetoh | 12:24 | comments(0) | - | pookmark |

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